鴨東幼稚園

臨床心理士・ゆかこ先生のおはなし

あそぶこと=想像力

  今年度は日常生活でも幼稚園生活でも、これまでと違うことがたくさんあり、試行錯誤しながらの一年だったのではないかと思います。けれど、幼稚園で子どもたちを見ていると、子どもの想像力、エネルギー、生きる力はすごいなぁ!と、そして変わらず元気にあそび笑っている姿を見て、安心もしました。そしてまた、いつも変わらず優しく温かく見守り、導いて下さる先生方の存在が本当に大切だということも、これまで以上に感じた一年でした。様々な感染対策をしながらの保育は大変だったと思いますが、手作りの遊びや活動を工夫され、子どもたちも想像力を存分に発揮して、のびのびとあそんでいました。幼児期の子どもにとって‘‘あそぶこと”は、睡眠や食事と同じくらい、生きていく上で大切なことの一つです。一人でも、お友だちとでも、信頼できる大人とでも、物や自然との関りでも、なんでもいいからとにかく自分で、自由に、指図されずに、思いっきり好きなようにあそぶということです。(*危険なことは注意)“あそぶこと=想像力”は、その子の生涯にわたっての、困難を乗り越えて生きる意欲の源になり、人生を豊かなものにしてくれるものだと思います。

  さて、そんな幼稚園生活もゆり組さんにとってはいよいよ最後ですね。卒園に向けていろいろ練習している姿を見ながら、入園当初からのことを思い出すと、体も心もなんて大きくなったんだろうと胸が熱くなりますね。ゆり組さんに限らず、子どもはみんな本当に、小さな体でその時その時の自分にできる精一杯で、頭と心をフルに働かせて生きているなぁと感じます。大人が動いてほしいように動かなくても、それは自分の頭と心で考えたり感じたりすることができ、それに従って動くことのできえう力を持っているということでもあります。自分の意志を持ち、それに従って行動する、というのは案外難しく、勇気のいることです。この園で出会う子どもたちは、そんな生きていく上で大切な力がしっかり育っていて、それはご家族と先生方が子どもたち一人一人を、小さくても一人の意思を持つ人として認め、尊重し、子どもの気持ちを何よりも大切にして下さっているからこそです。

教室に飾ってある子どもたちの絵は、想像力やエネルギーにあふれ、個性がよく表れていて、どの作品もとても魅力的です。今の日本の学校教育や社会ではしばしば、“みんなと同じように”、“同じスピードで”、“効率よく”という価値観や風潮があります。小1の我が娘も、幼稚園で教わった『みんなちがってみんないい』のお歌を出して「どうして学校はそうじゃないの?」と時々嘆いていますが、幼児期にしっかりした心の土台の基盤ができ、またどんな時でも、どんな自分でも認め受け入れてくれる存在(場所)がいる(ある)ということが、大きな心の支えになっています。卒園するゆり組のみなさんが、今のすてきな魅力や個性を失わず、どうか自分を大切に生きていかれることを心から祈っています。

自分で成長する力

まだまだ続く目に見えないウイルスの脅威に加えて、各地での豪雨災害のニュースを見て、これから私たちは、この自然とどのように共存していくのかと考えさせられる今年の夏です。幼稚園の皆様、ご家族の皆様のご無事を心から祈っています。

長い休園期間があり、また再開後も新しい生活スタイルに慣れないこともある中、子どもたちが笑って元気に遊ぶ姿を見ているとこちらが元気をもらいますね。

新入園のお子さんたちと保護者の皆さま、1つ学年が上がって新しい教室や先生になった子どもたちは、幼稚園の生活に慣れてこられましたでしょうか。子どもというのは本当にエライもので誰に言われなくても、‘‘幼稚園に入った!”‘‘おにいさんおねえさんになった!”とちゃんと自覚してがんばろうとします。その思いと、まだ能力が十分に追いついていない部分とのギャップでうまくいかずに、時にはカンシャクを起こしたりすることも出てくるかもしれませんが、子どもの‘‘じぶんで!”伸びようとする芽をそっと、根気強く見守って下さいね。

先日、休園明けに久しぶりにお会いしたお母さんから、うれしいお話をお聞きしました。‘‘自粛期間中ずっと親子でべったり、しつけも気になったけどまぁいいか~と、ゆる~りと過ごしていたら、急に子どもが自分から自分のことを一人でするようになったんです!”と深く感じ入っておられました。こんなふうに、子どもを信頼して任せてゆったりかかわれたお母さんも素晴らしいですし、子どもの方もそれにちゃんと応えてくれる、ということを改めて確かめられらた思いがしました。一人でお着替えや食事の習慣、トイレ・・などなど、親としては気になることも、こうなってほしい、という思いがあるのはよくわかりますが、焦らなくても、心配しなくても頑張って練習させなくても、不思議なことにだいたい卒園する頃には、ちゃんとそれなりに出来るようになっています。大人ができることは、子どもの自分で成長する力を妨げないよう、ゆったり見守り、子どもが必要とするところは、もったいぶらずに手を貸すことくらいです。

今は、子どもたちがのびのびと、体も心も健やかに暮らせている日常が本当に貴いことだなと感じています。

 

今年は幼稚園での生活も今までとは少し違う形になることもあり、特に幼稚園最後の年となるゆりぐみさんにとっては、残念に思うこともあるかもしれません。去年のゆりぐみさんも、みんながとっても楽しみにしていたお別れ遠足が中止になりました。代わりに先生方が作って下さった鴨東水族館へ!子どもたちは大喜びで満喫し、大興奮でそのことを話してくれました。私はそれを聞いて、じ~んと胸が熱くなりました。(わが娘も幸運にも鴨東水族館にいくことができ、またゼッタイ行きたい!と思い出しています。)子どもの持つ感性ってすごいですね。どんな状況でも、お友達や先生と過ごすどんな時間も、子どもにとってはかけがえのない宝物になります。どうか、すばらしい1年になりますように。

母親というもの

やわらかな日差しの中に、春の訪れを感じる季節になりました。世界的な新型コロナウイルスの流行の影響を受け、なんとなく落ち着かない毎日ですが、幼稚園の皆様の心身の健康と1日も早く事態が収束することを願っています。

 

卒園するゆり組のみなさんへ

いよいよ卒園の日が近づいてきました。いろいろな行事の縮小や中止など、とても残念なこともありますが、気持ちだけは精一杯込めて、ゆり組の子どもたちを送り出したいなと思います。子どもたちにとって、お友達や先生と過ごした一瞬一瞬の時や経験のすべてがきらっと光る宝物のように心の中に残り、これからの人生の糧となることと思います。

そして、4月には小学生です。入学説明会では、「規則正しい生活習慣を!」というような入学への心構えの話がされ、私も少し面食らい、焦らされるような気がしましたが、生活習慣や身辺自立については入学した後、そのうちに自然に身についていきますので、「もうすぐ小学生だから」と言って練習しなくても大丈夫です。今は幼児期最後の時間を思いっきりたのしく、思いっきり甘えて、春休みはしっかり休息し、親子でゆったり過ごすことが一番の心の準備になるので、大切に過ごして下さいね。ゆりぐみのみなさんの、すばらしい未来を心からお祈りしています。

 

母親というもの

子育てはまだまだ続きますが、卒園はひとつの区切りですね。妊娠・出産・育児は母親にとって、肉体的にも精神的にも、まさに命がけの大仕事です。無事に生まれるように祈り、出産し、産後は身も心も全て赤ちゃんのために、睡眠・食事もいつ取れるか分からないサバイバルの日々が始まります。それまでは一人の時間が持てたり、仕事をしたり、自分のペースで生活できていたのがまるっきり子ども中心の生活に、180度価値観を転換することを余儀なくされ、“産後うつ”と言われる危機を体験する人も少なくありません。私自身も、毎日家族が仕事に出て行くのが憎いほど羨ましく、赤ちゃんと2人きり、まるで宇宙の果てにぽつんと取り残されたような、そしてその気持ちは誰にも分からない、と思うような孤独を感じたこともありました。泣きやまない赤ちゃんと2人、途方に暮れて、2人でわんわん泣いた日もありました。2人きりで煮詰まって、何も悪くない子どもにきつく当たってしまい、後で自己嫌悪に陥ることが続いたこともありました。(それは今でもしょっちゅうありますが…)私は以前、児童養護施設で働いていましたが、そこで見てきた子どもや家庭のことが、決して遠い所の話ではなく、自分にも紙一重で起こりうるかもしれないと思い知りました。周りのサポートや多少の専門知識があり、子ども一人だけてさえもです。それほど、出産・育児は女性にとって衝撃的な体験なのだと思います。そうこうして、なんとか日々をやり過ごしているうちに、いつのまにか気がつけば、子どもは頼もしく成長し母の支えに冴えなってくれるほどになりました。

幼稚園などで、同年代の子を持つお母さんたちを見ると、たとえ言葉を交わしたことが無くても、「あー、同じような思いをしながらみんな頑張ってるんやなぁ」と不思議な仲間意識や親しみのような物を感じます。こんな「母親」という偉業を成し遂げている、すべてのお母さんたちに、敬意と拍手の気持ちでいっぱいです。「私たち、ほんとよくやってるよね!」と自分たちを労い、時にはふっと肩の力を抜いて、これからも続く子育てというかけがえのない時を、いろんな思いを含めて全てを大切にしていけたらいいなぁと願います。

 

 

 

きょうだいのこと

みなさん、あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。寒い日が続きますが、3学期も子どもたちが元気に思いっきり遊ぶことが出来たらいいなと願っています。

お休みなどの長い休みは、子どもたちにとってはゆっくりしたい、楽しい行事もたくさんあったりでうれしいお休みですが、親御さん方にとっては、楽しい反面、大変な面もあるかと思います。中でも、きょうだいがいるご家族では、きょうだいけんかやトラブルが増えて、親御さんのイライラや苦労も大きくなるかもしれませんね。おもちゃやゲームの取り合いから、順番争い、手や口が出る、お母さんの取り合い、兄・姉のマネをしたがる…などなど、とにかくどんなことでも最後はけんかになる、そんな時どう対応したらいいか、というご相談はよくお聞きします。

その時々の対応は「やめなさい!」と一喝して終わり、放っておく、おもちゃを取り上げるなど、それぞれのご家族で苦労されながらも日々やり過ごしておられることと思います。大事なことは、ケンカの時は、親はどちらの味方もしない、どちらか一方だけを悪者にしない、両方の言い分をよく聴くことです。(例え、どちらかが先に手を出したとしても、必ず理由があるはずなので、手を出した方だけを叱るのではなく、どちらからも話を聴く)

ケンカの後きつく叱ったり、おもちゃを取り上げたるなどの“罰”も時には(一時的には)有効かもしれませんが、どちらかというと日頃から(親に余裕のある時は)きょうだい全員に対して甘めに、ゆるめに、また譲れたり待てたりした時にはしっかり褒めるという“アメ”対応をしている方が、それぞれに満たされて、穏やかになります。(甘くしたからといって、けんかや“わがまま”がエスカレートすることはありません。一時的にそう見えることはあっても大丈夫です)ささいなことでケンカする背景に、それぞれが満たされなさや、相手への嫉妬の気持ちがある場合も多いので、まずはその思いを普段から心に留めておいてもらうだけでも変わります。

♡きょうだいについてのポイント♡

♡「平等に」と思わない…下の子はだまっていても世話を焼いてもらえるし、甘えるのも上手。上の子に心をかける比重をぐんと大きくして。(ただし、その時々で必要な子に心をかけることが大切)

♡「おにいちゃんだから」「おねえちゃんでしょ」は禁句。特に上の子は、親に褒められたいから頑張ってしまうけれど、不公平感が積もっていく。

♡可能であれば、下の子を預けたり、寝た後に上の子とお母さん2人だけの時間を作る。ほんの短い時間でもok!スキンシップも◎

また、きょうだいの仲が良く、上の子が下の子のお世話をよくしてくれる(逆もあり)場合は、気遣ってくれる方に対して「いつもありがとう」と気持ちを込めて、こっそりご褒美をしたり(物ではなくても、言葉や時間で)、褒められたくて頑張りすぎてないか、気にかけておいて下さいね。

「やりたくない!」と言える力

金木犀が香る秋らしい気候になりました。相次ぐ台風に、各地の被害が心配されますがご家族、ご親戚の方々はご無事でいらっしゃいますでしょうか。被災された方々が少しでも早く元の生活を取り戻すことができますようにお祈りしています。

さて、幼稚園では先日、さわやかな秋晴れの下、運動会が無事に終わりました。子どもたちのがんばったことたとえ、競技には参加しなかったり、うまくできなかったとしても、練習からの子どもたちの心の動きを想像すると、幼い心と体でいろんな思いを抱いて精一杯がんばっているんだなぁと胸が熱くなります。一年一年、毎日毎日の子どもたちの成長は大人の想像をはるかに超えているなぁと、改めて驚かされました。また卒園生や、お兄ちゃんお姉ちゃんたちの頼もしい姿にも会えて、とても嬉しかったです。お友だちと楽しんで参加したり、大勢の人の前にしっかり出られたり、小さい子の面倒を見たり、先生のお手伝いをしたり…幼稚園時代に培われた力がしっかりと土台になり、自分への自信につながっているんだなぁと実感しました。

先生方、親御さんが、子どもたちの気持ちを尊重し、子どもの力を信頼して焦らず、子どもに任せていると、子どもたちは自ら“ここぞ”という時に力を発揮します。今、子どもたちが幼稚園で経験していること、またその時に周りの大人がどう関わってきたか、ということ全てが子どもたちの心の糧となります。子どもたちが表現するどんな姿も、“よくがんばっているな”という思いを持って見て頂けたらと願います。

運動会のような行事や日々の保育の中で、またお家での生活習慣や習い事などの中でも、大人が思う「やらなければいけないこと」と子どもの「やりたいこと」はしばしばズレていることが多く、そこで大人はイライラしたり頭悩ませることも多いのではないでしょうか。ある程度の年齢になると、「やりたくないけど、今はやらないといけない」と自分の中でうまく気持ちの折り合いをつけられるようになってきますが、まずは「やらなければいけないこと」は置いておいて、「やりたいこと」を思う存分やった!という体験を十分にすることが大切です。そうすると子どもはえらいもので、いつのまにか自分から、やらなければいけないこともするようになっていきます。しかも、それまでやりたい放題やってきた子が、やらされるのではなく、自ら納得して自分の意志でする時、驚くような集中力や想像力、創造力を見せます。

幼児期に「やりたくない!」と主張できること、やりたいことを思う存分させてもらうことは、自分で考える力、自分で選択する力、人と比べたり周りの顔色を見るのではなく、自分は自分と思える力につながります。そして思春期以降になって、イデンティティーの課題にぶつかったり、自分は何がしたいのかと考えるようになった時の心の土台になります。子どもが「やりたくな~い!」と言ってきた時、どうしても必要な最小限のこと(よく考えるとそれほど多くありません)以外は、“あー、しっかり育ってるな”と思って大らかに見て頂けたらいいですね。