鴨東幼稚園

臨床心理士・ゆかこ先生のおはなし

まだまだ寒いですが、静かに美しく咲く梅の花の芳しい香りに春の訪れを感じます。みなさまいかがお過ごしでしょうか。

” その子らしさ”を大切に

 あっというまに3学期も残り少しとなりました。

 幼稚園ではいろいろな行事の練習や発表の機会が多い時期ですね。楽しんで取り組む子、ちょっとニガテだなあという子、キョウミナシという子…などいろんな子がいます。もちろん、いろんな子がいて当たり前、人間(生き物)は一人一人持って生まれた性格や性質、能力、嗜好などがみんな違いますよね。みんなで力を合わせて一つのことを成し遂げる喜びや、苦手なことをがんばって克服する達成感などもありますが、”ニガテ”や”キライ”を強制・矯正される必要は必ずしもない、と私は思います。子どもたち(人)はみんな、ひとりひとり違った、キラッと光る魅力を必ず持っています。とびきりの笑顔、やさしさ、人なつっこさ、ひょうきんさ、まじめさ、きょうだいをかわいがる、好きなことに没頭する、本当にどの子も魅力的ですばらしくて、唯一無二の存在です。そのことをこれまで出会ったたくさんの子どもたちから教えられました。そして、その子たちがそれぞれに成長して、試行錯誤しながら、自分の道を探して、一生懸命生きていっている過程を共に過ごしてきました。そんなかけがえのない存在である子どもたちの”その子らしさ”が失われず、みんながそれぞれの個性や違いを尊重し合える社会であることを願います。

 親も子も、しあわせな日々を

 そんな子どもたちの力に少しでもなりたい、子どもの思いを伝えたい、との思いから心理士を志し、仕事をしてきました。学び、経験を重ねる中で、あらためて今、感じるのは、今目の前にいる子どものありのまま、そのままを受け止めたい、ということです。”○○才では△△ができるように”とか、苦手なところを伸ばそうと成長を促したり、何ができるかできないかを見るのではなく、その子が楽しく幸せに暮しているか、を大切にしたいです。子どもはそれぞれのペースでちゃんと育っていくのだから、その子の力を信頼して、ど~んと構えて、その時その子が求めてるようにすればよい、そして子どもが困っている(サインを出している)時には、適切な手助けをすればよい、と思い至りました。

 もう一つは、仕事を始めた当初は、どちらかというと子ども中心で”子どもびいき”なところがありましたが、多くの親御さんとお会いし、また自分自身も出産・子育てを体験する中で、親の思い、しんどさ、また親自身の生い立ちにも深く思い至るようになりました。親も子もひとりの独立した存在、子どもは親の思い通りには育たないし、親も100%子どもの思いに応えられるわけではありません。親、子それぞれ別の人生があり、どちらも大切です。それでもやっぱり、子どもが親を思う気持ち、”おかあさんおとうさんだいすき”の気持ちは、何よりも強いなあ、ということは、あらゆる場面で変わらずに感じ続けていることです。親子の相性や思いのズレ、それぞれのしんどさもありますが、せっかくこの世に生まれて出会った親子が、どうか幸せでいられますように、と祈っています。そして、大変の時はいつでも、周りに頼ることを忘れないで下さいね。

 いつも拙い文を読んでくださり、長い間、鴨東幼稚園の一員でいさせていただき、ありがとうございました。

                                     有井友佳子

ついこの前までまだ水あそびができるくらいだったのが、ようやく秋めいて、どんぐりや落ち葉ひろいが楽しい季節になりました。気候の変化に、子どもたちみなさん、体調はいかがでしょうか?

✿がんばりすぎていませんか?

 2学期も半ばとなり、子どもたちのぐんと成長している姿におどろきます。毎日接しておられる親御さんにとっては、日々変わる子どものキゲンや様子に一喜一憂したり、成長とともに新しい課題が出てきたり、と心を砕いておられることと思います。特に、子どもの様子が急に変化したり、手がかかる難しい状態になった時は、どう接したらいいのか悩んだり、不安になったりされるかもしれません。

たとえば…★急によく泣く(怒る)ようになった ★甘えが激しく、べったり離れない

     ★きょうだいやお友だちに手が出ることが増えた ★登園や登校を渋る

     ★今まで一人でできていたことができない(着がえや身の回りのこと、食事など)

     ★身体の症状やクセ(指しゃぶり、爪かみ、体の一部を触る、頻尿、夜眠りにくい、など)

など、子どもは様子や症状によく表れます。特に子どもは、心身未分化で、まだ言葉で十分に表現できないので、こうして様子や症状で表してくれることは、大切なSoSのサインです。成長の過程や発達の個人差として表れることもありますが、体調や疲れ、緊張や不安があるなど、何かしんどくなる要因があるかもしれません。例えば、登園・登校や習い事、親の期待に応えよう、良き兄・姉(弟・妹のこともある)でいようとがんばっている、忙しそうな親への気遣い、毎日やるべきことが多い、などなど、知らず知らずのうちに、子どもはがんばりすぎている(がんばらせすぎている?)こともあります。子どもの要因や環境によっても違いますが、キャパオーバーの状態になっているかもしれません。

✿ポイントだけおさえて、親も子もラクに

 子どもは表れかたも顕著ですが、生活や接し方を少し変えるだけで効果も表れやすく、状態がすう一っと落ち着いてくることも多いので、あまり心配はしすぎずに、ちょっとだけ意識してみて下さい。

  ★無理のない、ゆっくりめのスケジュールにする→疲れやすさは個人差が大きいです。

  ★しつけやきまりごとをゆるめにする ★登園、登校、習い事を無理強いしない→回復したらまたできるようになったり、ちがう道が見つかることも。

  ★親自身も、家事を手抜きするなど、できるだけゆったり過ごす→むずかしかもしれませんが、効果大です♡。

子どもはまさに千差万別。成長のスピード、個性、置かれている状況によっても全然ちがうので、目の前の子どもの様子をよく見て、気持ちを想像して、その子が過ごしやすい環境をととのえると、子どもも親も少しラクに暮らせると思います😊育児は”思ってたのとちがう”ことばかり。けれど、子どもの表してくれることに心を傾け、育つ力を信頼して、子どもとの尊い時間がよりよいものになることをねがっています。

🍂おはなし会   11月8日(火)ばらぐみの保護者の皆さんとおはなし会を予定しています。ちゅうりっぷ、たんぽぽさんの方でも、ご希望の方はご参加ください。お待ちしています!

新年度が始まって早くも2か月近く経ち、緑が美しい季節になりました。臨床心理士の有井友佳子です。鴨東幼稚園に来て17年目、初めて出会った子が成人したと聞き、とても感慨深く、大切な幼児期の子どもたちと保護者の皆さまと共に過ごせることを、とてもうれしく思っています。どうぞよろしくおねがいします。

大切なふたつのこと~「甘え」と「あそび」

幼稚園では運動会も終わり、子どもたちがのびのびと思い思いにあそんでいますね。おうちの人と離れるさびしさを越えて、先生やお友だちと、時には泣いたり怒ったりけんかもしながら…まさにその姿に、幼児期にいちばん大切なことがぎゅっと詰まっています。それは、「周りを信頼して甘えて、思いっきりあそぶこと」です。乳幼児期を通して、子どもの欲求が受け止められ満たされることを繰り返す中で、子どもは自分が生まれた世界への基本的信頼感と自分の存在への自信がしっかりと育ち、それはその人の人生の一生の土台となります。赤ちゃんは泣けば、たいていの場合、かいがいしくお世話をしてもらえますが、だんだん大きくなってくると、一人でできることや我慢できることも増えてきて、ついつい自立を促されます。けれど、ぜひ、子どもが求めている間は、いつまでもお世話したり抱っこしたり、甘えさせて下さい。それで自立が遅れたり、わがままになったりはしません。むしろ、十分満たされ、気持ちが安定していると、自然に自立していきますし、また子どもの要求が先に満たされてこそ、大人の言うことも聞いたり、やるべきことができるようになります。そして、親や信頼できる先生に見守られた安全基地の中で、指図されたり𠮟られたりせずに、自分のやりたいことに没頭して自由に思いっきりあそぶことを通して、自立や社会性、感受性など、あらゆる力が育ち、少しずつ世界を広げていくのです。この「甘え」と「あそび」がしっかりできていれば、子どもが生来持っている”自分で成長する力”が発揮されるのだ、と、いつも子どもたちから教えられています。

みんなで子育てを

と言っても、親の方に心と体の余裕がないと、こんなふうに子どもに接するのは難しいですよね。きっとどの親御さんも、やさしく笑顔でいたいと思っておられると思いますが、24時間365日休みなしの育児に疲弊しきっていると、頭ではダメだとわかっていても、どうしても感情的になって声を荒げてしまうことは、多くの方が経験されているのではないでしょうか。けれど、日頃から、”あなたは大切な存在だよ”ということが子どもにしっかり伝わっていれば、少々怒鳴ったくらいでは大丈夫です。子ども一人を産み育てるのは、他のどんな仕事とも比べられない大変な大仕事です。子育ては家族だけでするのではなく、親は「こんなスゴイことしてるんだから」と、堂々と周りに頼って下さい。まずは親御さん自身が心身共に健やかに暮らせ、地域で、みんなで子どもたちを大切にしていくことができるよう、一緒に考えていきたいと思っています。

来園日・相談日

第2.4火ようび午前

相談日:第3火ようび午前

・一人45分・園にご予約下さい

・相談内容は守秘します

・子育て全般、発達、気になるクセや症状について、卒園生、きょうだい、ご家族のことなど。

おはなし会

保護者の皆さまとのお話会を各学期に予定しています。日頃気になっておられることなど何でも気楽に話す座談会です。ぜひご参加お待ちしています!

冬らしい寒さが続いていますが、梅のつぼみがふくらみ始め、少しずつ季節が進んでいることを感じます。長引くコロナの影響で、不安や不自由な思いをしている方もおられるかもしれませんが、みなさま、いかがお過ごしでしょうか。お子さん、ご家族で、もし心身の不調など何か気になることがあれば、小さなことでも、早めに一度ご相談ください。

“今”を認めて、ポジティブなことばで

先日、暖かく気持ちのいい日に、ゆり組のこどもたちが、お砂場で特大のお山を作っていたり、自分の好きなことにじっくり没頭していたり、それぞれに充実した表情で遊んでいる姿を見て、幼稚園での数年間で体も心もこんなに大きく成長するんだな、とあらためてしみじみ感じている3学期です。この時期になると、大人の口からは、「もうすぐ1年生(○○ぐみさん)になるんやから…」という言葉が時々聞こえてきます。親や先生としては、”準備しないと”という思いになるのはよくよく分かりますし、つい出てくる言葉ですよね。でも、子どもたちの心はしっかり育っていて、1つ学年が上がることを自分でもちゃんとわかっています。そしてそのことへの楽しみや誇り、緊張や不安などいろんな思いを持ちながら、日々、それぞれの精一杯で過ごしているので、そこへさらにプレッシャーを与えるような言葉はいりません。特に、「そんなことしてたら1年生(○○ぐみ)になれへんよ!」はいちばんのNGワード。子どもはど~んと撃沈された気分になってしまいます。何においても言えることですが、特にしつけなどでは、ネガティブな言葉を使うよりも、「○○ができるようになったね!さすが○○ぐみさん(現在の年齢で)!!」とか、小学校行ったら○○が楽しみやね~♪」など、自信や楽しみを持てるような具体的でポジティブな言葉を使う方が、子どもは安心して、落ち着いて、楽しみに次のステップに向かうことができます。

準備はあせらず、よい日々を

新しい学年になる前に、と、たとえばトイレットトレーニング、身の回りのことを自分でする、早寝早起き、文字を覚える…などの練習や準備もついついさせたくなりますが、それもまったくしなくてもOKです。タイミングはそれぞれ違いがありますが、そのうちに、いつかは、周りを見て自然とできるようになります。また、お家ではできていなくても、園や学校生活が始まると、そこでは何とかなるものです。むしろ、準備や練習を頑張りすぎて、余計にイヤになったり不安が高まったり、逆効果なこともあります。場合によっては、様々な身体症状やクセ、行動の変化が表れることもあります。ですから、今の大切な日々を、余計なプレッシャーなく思いっきり遊んで、「あ~楽しかった~」と思える時間を過ごすこと、ゆったり休息すること、そして十分に甘えること(だっこだっこと甘えてきてくれるのもあと数年ですよ^_^)、これが次のステップへの何よりの準備です。子どもたちの成長を見ていると、それは親御さんや先生方の「子どもを大切に思うきもち」という栄養をたっぷりもらってこその、よい育ちだなぁ、と実感します。親御さん自身も「あーよくがんばってる!」と自分をねぎらって下さいね。親も子もみなさんが、自分を大切にして、よい日々を送っていかれることを祈ります。(有井友佳子)

卒園後も、卒園生、ご家族のご相談をお受けしています。在園児の方も、相談ご希望の方は、園に予約をお願いします。相談内容は守秘義務が守られます。

秋空の下、子どもたちはお外でたくさん遊び、虫たちや植物に触れ、季節を肌で感じていることでしょう。子育てをしていると、季節のうつろいや風情をより感じるようになりました。みなさま、いかがおすごしでしょうか。

「自分で!」「ひとりで!」「おてつだい!」

2.3か月ぶりに会った子どもたちは、体も顔つきも心もぐぐ~んと大きくなってびっくりしました。子どもが自ら成長する力はほんとにすごいですね。先日、たんぽぽ組でのとある出来事。リトミックの後、フープを二階に運ぶお手伝いを、こどもたちは率先してやっていた時、ある子が一つしか運べず、「もっとやりたかった~」と大泣き、しばらく泣き続けた後、担任の先生、別の物を運ぶという提案にぱっと泣き止み、他の子が一緒にしようとするのを振り切って、”ひとりで”重たそうなかごを二階まで運び、満足気に戻ってきました。まさに、3歳児の姿だなあと、ほほえましく見えていました。先生も泣いていたその子に、「ありがとう。もっとやりたかったかったんやね。」と声をかけ、代替え案を見つけ出されて、上手にさりげなく、子どもの気持ちを理解して受け止めておられました。

幼児期の子どもは、それぞれの性格などにもよりますが、大人のお手伝いや、「じぶんで!「ひとりで!」と大人の手を借りずにやりたがります。でも、まだうまくできないことも多くイライラ怒り出したり、かと思えば、一人で出来るはずの事も「ママやって~」と言ったり、成長と気持ちの間で揺れ動きながら、幼児期のテーマでもある自立心や自発性を少しずつ身につけていきます。また、ちょっと難しいことでも、失敗してでも、自分一人でやってみたい!という子どもの自立心やチャレンジ精神、好奇心の旺盛さにはおどろかされます。そして、お手伝いや役割を任されると、とても誇らしげに、そのお仕事を子どもなりに全力でがんばります。まだまだ練習段階なので失敗の方が多いくらいですが、親の方としては、ただでさえ時間の余裕がない時に、余計な手間が増えて、つい怒ったり文句を言いたくもなりますよね。けれど本人も失敗してバツが悪かったり、「おこられる」とビクビクしているかもしれないので、怒るのをぐっとこらえて、「お手伝いしようとしてくれてありがとう」「じぶんでやろうとしてえらかったね」という思いを(できれば笑顔で]伝えていただけたらいいなあ、と思います。とてもむずかしいですが。とはいえ、いつもこんなに広い心でいるのはむりなので、余裕がない時は、さっと大人がやってしまってもok。「またできるときにおねがいするね」と頼み、大人の方もその約束を守ってくださると、こどもはまたはりきってやってくれるはずです。いい子育てをとがんばりすぎないで、ちょっと肩の力を抜いて、みんなで知恵を出し合いながら、子どもの心の土台を育んでいけたらいいなと、願っています。

おまけもうひとつ、子どもがお手伝いをしたがるひみつは、「だいすきなお母さん、お父さんを喜ばせたい」「忙しそうなお母さんを助けたい」と言う思いが詰まっています。子どものいろんな行動の奥には、そんな子どものやさしさが、隠れていることがよくあります。ぜひ一度、そういう目で見て下さいね。