鴨東幼稚園

臨床心理士・ゆかこ先生のおはなし

母親というもの

やわらかな日差しの中に、春の訪れを感じる季節になりました。世界的な新型コロナウイルスの流行の影響を受け、なんとなく落ち着かない毎日ですが、幼稚園の皆様の心身の健康と1日も早く事態が収束することを願っています。

 

卒園するゆり組のみなさんへ

いよいよ卒園の日が近づいてきました。いろいろな行事の縮小や中止など、とても残念なこともありますが、気持ちだけは精一杯込めて、ゆり組の子どもたちを送り出したいなと思います。子どもたちにとって、お友達や先生と過ごした一瞬一瞬の時や経験のすべてがきらっと光る宝物のように心の中に残り、これからの人生の糧となることと思います。

そして、4月には小学生です。入学説明会では、「規則正しい生活習慣を!」というような入学への心構えの話がされ、私も少し面食らい、焦らされるような気がしましたが、生活習慣や身辺自立については入学した後、そのうちに自然に身についていきますので、「もうすぐ小学生だから」と言って練習しなくても大丈夫です。今は幼児期最後の時間を思いっきりたのしく、思いっきり甘えて、春休みはしっかり休息し、親子でゆったり過ごすことが一番の心の準備になるので、大切に過ごして下さいね。ゆりぐみのみなさんの、すばらしい未来を心からお祈りしています。

 

母親というもの

子育てはまだまだ続きますが、卒園はひとつの区切りですね。妊娠・出産・育児は母親にとって、肉体的にも精神的にも、まさに命がけの大仕事です。無事に生まれるように祈り、出産し、産後は身も心も全て赤ちゃんのために、睡眠・食事もいつ取れるか分からないサバイバルの日々が始まります。それまでは一人の時間が持てたり、仕事をしたり、自分のペースで生活できていたのがまるっきり子ども中心の生活に、180度価値観を転換することを余儀なくされ、“産後うつ”と言われる危機を体験する人も少なくありません。私自身も、毎日家族が仕事に出て行くのが憎いほど羨ましく、赤ちゃんと2人きり、まるで宇宙の果てにぽつんと取り残されたような、そしてその気持ちは誰にも分からない、と思うような孤独を感じたこともありました。泣きやまない赤ちゃんと2人、途方に暮れて、2人でわんわん泣いた日もありました。2人きりで煮詰まって、何も悪くない子どもにきつく当たってしまい、後で自己嫌悪に陥ることが続いたこともありました。(それは今でもしょっちゅうありますが…)私は以前、児童養護施設で働いていましたが、そこで見てきた子どもや家庭のことが、決して遠い所の話ではなく、自分にも紙一重で起こりうるかもしれないと思い知りました。周りのサポートや多少の専門知識があり、子ども一人だけてさえもです。それほど、出産・育児は女性にとって衝撃的な体験なのだと思います。そうこうして、なんとか日々をやり過ごしているうちに、いつのまにか気がつけば、子どもは頼もしく成長し母の支えに冴えなってくれるほどになりました。

幼稚園などで、同年代の子を持つお母さんたちを見ると、たとえ言葉を交わしたことが無くても、「あー、同じような思いをしながらみんな頑張ってるんやなぁ」と不思議な仲間意識や親しみのような物を感じます。こんな「母親」という偉業を成し遂げている、すべてのお母さんたちに、敬意と拍手の気持ちでいっぱいです。「私たち、ほんとよくやってるよね!」と自分たちを労い、時にはふっと肩の力を抜いて、これからも続く子育てというかけがえのない時を、いろんな思いを含めて全てを大切にしていけたらいいなぁと願います。

 

 

 

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